【質問】聖書では数々の奇跡が出てきます。奇跡は本当に起こった出来事なのでしょうか。イエスは本当に奇跡を行ったのでしょうか。むしろ奇跡の記載がない方が、聖書を信じられるように思うのですが……。
【私たちの答え】
奇跡とは、神だけが行うことができる超自然的な出来事です。物理法則、自然科学の法則に反して、神だけが行うことのできるものです。
同時に「奇跡」を行って見せて、人々を騙す宗教家がいることも確かです。彼らは宗教的な詐欺師で、よくできたトリックを使って人々を欺きます。
ではイエス・キリストの奇跡はどうでしょう。奇跡がどうして、彼が自ら宣言した通り「イエスが神である」ことの証明になるのでしょうか。
それともイエスが行った驚くべき偉業は、単に彼が群衆を騙して、自分に従わせるための行ったイリュージョンに過ぎなかったのでしょうか。
世界的なマジシャンであるアンドレ・コール ※1 は、イエスが行った奇跡に関して、非常に興味深い洞察をもっています。アンドレは世界各地で、何億という人々の前で、マジックショーを行なってきました。
アンドレ自身も1000を越えるイリュージョンを、自ら考案。今日世界トップ7に入るマジシャンたちがアンドレが考案したイリュージョンを、自分の公演に取り入れています。
そんなアンドレに対して、世界各国の警察当局は「奇跡」についての調査と検証を依頼しています。病気の治癒を偽る「奇跡」を行うことで人々の関心を集め、金銭を騙し取るの詐欺行為が横行しているからです。アンドレは数々の「奇跡」を調査することで宗教詐欺の犯罪捜査に、長年、協力してきました。
そんなアンドレに、イエスが行った奇跡を精査してほしいという依頼がありました。もともとアンドレは神に懐疑的で、イエスを信じてはいませんでした。
ある無神論者はこう語りました。「キリスト教がこれほど長い間、成功をおさめたのは、イエスがマジシャンとして、極めて高い技術を持っていたからだ」アンドレも、この言葉に心から同意していました。
果たして、聖書が記録するイエスの奇跡は、本当に起こったのでしょうか。歴史的な事実を解明するため、聖書以外の書物を探ってみましょう。特に1世紀を生きた、クリスチャンではない歴史家たちは、イエスの奇跡についてどう描いているのでしょうか。
一世紀の歴史家、フラウィウス・ヨセフスはその著書『ユダヤ古代史』の中でこのように語っています。「…私たちは、イエスが驚くべき偉業をなしとげ、多くの人々を教え、ユダヤ人やギリシア人の中から信者を獲得した賢者であったことを知っている……。」※2
ユダヤ教のタルムードには、イエスの生涯の主要な出来事が実際に起こった出来事として、記載しています。イエスに対して敵対的な論調ですが、次のように記しています。
「私たちは、イエスが婚外子として受胎し、弟子たちを集め、神について冒瀆な主張をし、奇跡を起こしたが、これらの奇跡は神によるものではなく、魔術によるものであることを知っている。」※3
イエスに批判的な著者たちも、イエスが奇跡を行っていたことを書き留めています。イエスは当時、「奇跡」と呼ばれるような超自然的な出来事を行い、人々の注目を集めていたことは事実のようです。
ではイエスが行った行為は、本当に奇跡だったのでしょうか。イエスはタネや仕掛けを駆使して、「奇跡」が起こったように、人々に見せかけていただけなのでしょうか。
イエスの生涯に関しては、新約聖書の4つの福音書に記されています。3年半にわたる公の働きの中で、イエスはさまざまな奇跡を行ったことを、4つの福音書は記録しています。
イエスは水上を歩いて、ガリラヤ湖を渡りました。目が不自由な人の視力を回復させました。死人をよみがえらせ、数々の病気を治し、風と湖に命令して、嵐を一瞬で静めました。これらの奇跡は、イエスが神であることの証明でした。
イエスはこう語っています。「もしわたしが、わたしの父のみわざを行っていないのなら、わたしを信じてはなりません。しかし、行っているのなら、たとえわたしが信じられなくても、わたしのわざを信じなさい。それは、父がわたしにおられ、わたしも父にいることを、あなたがたが知り、また深く理解するようになるためです。……わたしと父とは一つです。」※4
ここで、イエスは「自分が神である」とはっきりと語りました。イエスは、自分が人々の罪をゆるすことができ、永遠のいのちを与えることができると話しています。
またイエスは、自分が世界の最終的な審判者であることを伝えます。イエスを信じる人はだれでも、神の愛と意義ある生涯を送ることができると約束しています。
しかし当時の宗教指導者たちは、イエスの奇跡に反発しました。イエスが彼らの偽善を指摘したからです。イエスの奇跡も、為政者たちの間で問題になっていました。何千もの人たちがイエスの奇跡を目撃し、影響を受けていたからです。
イエスが、死んで4日になるラザロをよみがえらせる奇跡を行ったあと、宗教指導者たちは集まって、相談しました。祭司長とパリサイ派の人々はこう論議しました。
「われわれは何をしているのか。あの者が多くのしるしを行っているというのに。あの者をこのまま放っておけば、すべての人があの者を信じるようになる。」※5
もし奇跡にタネや仕掛けがあるならば、イエスこそが史上最大のマジシャンでした。同じマジシャンとして、イエスが行った「奇跡」のネタと仕掛けを見破ってほしいと、アンドレ・コールに依頼が来ました。
アンドレは当時、世界最高のマジシャンと評価されていたからです。アンドレは、巨大な航空機や電車の車両、自由の女神を、完全に消失させるイリュージョンを披露していました。
アンドレはまた、横一列に手をつないだ人々がワシントン記念塔の下をくぐり抜ける、イリュージョンも行いました。
コールはこう語ります。「『イエスはただのマジシャンだった』と主張する人は、マジックの歴史に疎く、マジシャンの限界も知らない人です。経験あるマジシャンであれば、イエスの奇跡がイリュージョンであったとは、決して言えません。」※6
イエスの業にタネや仕掛けを見出せなければ、それは神の奇跡だと言えます。そして奇跡が、イエスが神であることを証明するのです。
アンドレはこう語ります。「私はイエスの奇跡の調査と検証を進める過程で、イエスを信じるようになりました。」
イエスの奇跡を調査する中で、アンドレ・コールは、イエスの奇跡がマジックではない根拠を見つけました。そのうちの一つが、イエスが湖の上を歩いたという奇跡です。
この奇跡は、マタイとマルコ、ヨハネと3つの福音書が記録しています。弟子たちが舟でガリラヤ湖を渡っていました。夜中、暴風雨が小舟を襲います。強風のため、舟は沈みそうでした。イエスはその光景を陸から見て、大波がさか巻く湖面を歩いて舟に近づきました。
マタイはこう書いています。「イエスが湖の上を歩いておられるのを見た弟子たちは『あれは幽霊だ』と言っておびえ、恐ろしさのあまり叫んだ。イエスはすぐに彼らに話しかけ、『しっかりしなさい。わたしだ。恐れることはない』と言われた。」
「…そして二人が舟に乗り込むと、風はやんだ。舟の中にいた弟子たちは『まことに、あなたは神の子です』と言って、イエスを礼拝した。」※7
実は、アンドレ・コールも、水の上を歩いたことがあります。英国BBCテレビがアンドレのマジック番組を企画したときです。番組のプロデューサーはアンドレに、水の上を歩いてほしいと注文しました。
それもただ水槽の上を歩くのではなく、イエスのように湖の上を歩いてほしいと、プロデューサーは依頼しました。
アンドレが水の上を歩いていると人々に見せるため、あらゆる方策が練られました。特別な装置を開発するのに、数ヶ月を要しました。何千ドルもの資金が費やされました。
そして開発した装置一式を湖に運ぶために、三台の大型トラックが必要でした。特殊ライトも、油圧装置も用意しました。そのうえで撮影したトリック映像を、上手に見せる編集技術も必要でした。
アンドレが人々に水上を歩いているように見せるイリュージョンのために、最新の科学技術、大量の機材、莫大な資金が必要でした。2000年前、イエスの時代にはこれらの技術や機材は、存在すらしないものでした。
アンドレの親友で世界的なマジシャン、デビッド・カッパーフィールド※8 も、イエスの奇跡をマジックで行うことは不可能だと語っています。ユダヤ人であるディビットは、次のように語っています。
「聖書の奇跡は、どんなマジシャンでもなし得ないものばかりです。しかし奇跡よりもすごいことは、イエスの生涯が何世紀にもわたって、何億人もの人々の人生に目的を与えていることです。」※9
イエスの奇跡は、愛を動機とするものでした。イエスが行った奇跡は、単なるエンターティメントではありません。自分の力を誇示したり、人の関心を引き出すものではありませんでした。イエスの奇跡はいつも人を助けるものでした。
イエスが弟子たちとナインの町に入ったときのことです。「イエスが町の門に近づかれると、見よ、ある母親の一人息子が、死んで担ぎ出されるところであった。その母親はやもめで、その町の人々が大勢、彼女に付き添っていた。」
夫を亡くし、一人息子も死んだ事実は、この未亡人の心に立ち上がれないほどの痛みをもたらしました。
「主はその母親を見て深くあわれみ、『泣かなくてもよい』と言われた。そして近寄って棺に触れられると、担いでいた人たちは立ち止まった。イエスは言われた。『若者よ、あなたに言う。起きなさい。』すると、その死人が起き上がって、ものを言い始めた。イエスは彼を母親に返された。」※10
イエスは未亡人の心の痛みを受けとめ、一人息子を生き返らせたのです。
イエスと弟子たちは、舟でガリラヤ湖を渡り、人里離れたところで休息をとる計画を立てていました。イエスの一行が目的地に到着したとき、男性だけで5000人以上が岸辺に集まっていたのです。
「イエスは舟から上がり、大勢の群衆をご覧になった。そして彼らを深くあわれんで、彼らの中の病人たちを癒やされた。」
夕方になり、弟子たちはイエスのところに来て、イエスに言います。「ここは人里離れたところですし、時刻ももう遅くなっています。村に行って自分たちで食べ物を買うことができるように、群衆を解散させてください。」 しかしイエスは群衆の必要を知り、空腹のままで彼らを帰らせませんでした。
イエスは、少年が持っていた5つのパンと干し魚2匹を提供してもらいます。イエスは天を見上げて、神をほめたたえ、パンを裂いて、弟子たちに渡します。するとパンと魚が、イエスの手の中で倍増していきます。そして男性だけで5000人に分配したのです。その結果「人々はみな、食べて満腹した。そして余ったパン切れを集めると、十二のかごがいっぱいになった。」※11
奇跡はマジックではありません。奇跡にはトリックがないからです。奇跡はエンタテーメントではありません。マジックは見て楽しむことはできますが、人生には何の影響も与えません。
しかしイエスの奇跡は愛が動機です。
イエスの愛が、人々の人生を変えるのです。
イエスは、人々の病気を奇跡的に治しました。目が不自由な人の視力を回復させました。足の不自由な人が歩くようになりました。重度の皮膚病も、一瞬で治りました。死んだ人が息を吹き返しました。群衆は自然と、そんなイエスのもとに集まってきました。
イエスが5000人に食事を提供した奇跡の翌日、群衆のうちの何人かが再び、イエスを訪ねます。イエスは彼らに言います。
「あなたがたがわたしを捜しているのは……パンを食べて満腹したからです。なくなってしまう食べ物のためではなく、いつまでもなくならない、永遠のいのちに至る食べ物のために働きなさい…。」
「わたしがいのちのパンです。わたしのもとに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者はどんなときにも、決して渇くことがありません。」
「…わたしのもとに来る者を、わたしは決して外に追い出したりはしません。わたしが天から下って来たのは、自分の思いを行うためではなく、わたしを遣わされた方のみこころを行うためです。わたしを遣わされた方のみこころは、わたしに与えてくださったすべての者を、わたしが一人も失うことなく、終わりの日によみがえらせることです。」※12
アンドレ・コールはマジシャンとして、イエスの奇跡を研究した結果、イエスの奇跡が本物であると確信します。その結果、アンドレはイエスを信じることができました。
イエスはこう語ります。「わたしが来たのは、羊たちがいのちを得るため、それも豊かに得るためです。」※13
イエスは十字架にかけられ、死んで、墓に葬られました。その三日目に、イエスは死から復活しました。イエスの死からの復活こそが、世界最大の奇跡です。
イエス自身は生前、何度も人々に、自分が殺され、三日後に死から復活することを明言しています。自分の死と復活に関する預言が、完全に成就したのです。イエスの死からの復活は、イエスが神であることを明確に証明しています。
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脚注: (1) アンドレ・コール(Andre Kole 1936-2022)はアメリカのマジシャン(奇術師)で、世界各地でイリュージョンを行った。アンドレは政府の依頼で、イエスの奇跡を調査する中で、イエスを信じる。国際キャンパス・クルセード・フォー・クライスト(Cru.) の宣教スタッフとして、マジックを通して、イエスを紹介する働きを世界各地で行った。著書にAndre Kole and AL Janssen, “MIRACLES OR MAGIC?”, Harvest House Publisher 1984. がある。
(2) Wilkins, Michael J. & Moreland, J.P. Jesus Under Fire (Zondervan Publishing House, 1995), p. 40. (3) 同掲書 (4) ヨハネ10:37, 38, 30 (5) ヨハネ11:47,48
(6) www.scotthumston.com/jesus-magician-or-god-by-andre-kole/
(7) マタイ14:26,27,32,33
(8) デビッド・カッパーフィールド(David Copperfield 1956-)アメリカ・ニュージャージー州出身のマジシャン。両親はロシア系のユダヤ人。高校卒業後、ミュージカル『The Magic Man』に出演して、一躍有名になる。アンドレ・コールとともに数々のイリュージョンを実施。現在もABCテレビでイリュージョンの番組を持つ。
(9) www.scotthumston.com (10) ルカ7:11-15 (11) マタイ14:13-20 (12) ヨハネ6:26-39 (13) ヨハネ10:10
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