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差別なき社会を夢見て

マーチン・ルーサー・キング Jr. 博士※1は、アメリカの人種差別根絶を目指して、公民権運動を導きました。本稿ではキング牧師の深い信念に基づいたビジョン、そして「夢」を見ていきます。

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チャールズ・グレマー

根深い人種差別という現実は「すべての人に自由と平等を」というアメリカ建国以来の希望に対する深刻な挑戦です。

絶えず発生する事件が人種間の葛藤を高め、敵意と反感の病巣が拡大しています。多くの事件の深層には猜疑心があります。ニュース記事を読む度に、アメリカでの人種間の融和には希薄で壊れやすい側面があることを思い起こします。私たちは、いつ破棄されてもおかしくない休戦状態の中で、生きています。

1963年3月に行われたワシントン大行進からすでに、何十年もの月日が流れています。キング牧師の有名な「私には夢がある I have a dream」の演説もこの大行進の時に語られました。しかしキング牧師の語った「肌の色ではなく、その人の人格の中味で判断される社会」の実現をまだ私たちは目にしていません。

人種間相互の不信はまだ続いています。人種差別から起こる事件のニュースが、今だにアメリカ全土から伝わってきます。

確かに60年代より今日、状況は改善しました。しかしキング牧師がもった「夢」を心に抱き、その「夢」に生きることはどれほど難しいことか、今だに考えさせられます。

キング牧師が描く人種差別がないアメリカの「夢」をどうしたら実現できるのか?

キング牧師が導いた公民権運動※2の結果、人種差別の根本原因や派生して起こる問題に対処する、数多くの社会プログラムが生み出されました。異文化理解教育、多文化間の対話、現在の多文化主義的な考えは、公民権運動から来たものです。

公民権運動のもと、多くの人種・民族グループが自分たちの権利を主張したことで、一つの現実が浮き彫りになりました。それは、あるグループには当然の権利であっても、他の民族グループから見ると間違った権利の主張にうつることがあるというものです。違いを解決しようとするよりも、多様な価値観の中で、互いの文化に寛容になることが大切だと叫ばれるようになったのです。

なぜ寛容さだけでは不十分なのか?

「他文化への寛容さ」だけでは、アメリカ社会の団結と対立の解決にはなりません。「他文化への寛容さ」は、互いに自分たちのやり方を、少しだけ認めるという意味にしか過ぎないのです。「寛容さ」はむしろ無関心となり、相互理解は深まりません。「他文化への寛容さ」の結果、相互間の隔たりはそのまま残されました。「寛容さ」では、民族間の孤立までは解決することはできなかったのです。

「異文化への寛容」は暗黙のうちに文化相対主義※3へと導きます。だれも何が正しく、何が間違えだとは言えなくなります。文化相対主義では、物事を価値判断する絶対的な基準がないのです。文化相対主義は、マーティン・ルーサー・キングの考えからは程遠いものでした。キング牧師はその著書で次のように語っています。

「キリスト教信仰の中心には、宇宙の根源であり、すべての本質である神の存在の肯定があります。無限の愛と力をもつ神は、創造主であり、世界を運行し、価値基準を保持される方… 文化相対主義に対して、キリスト教は絶対的な倫理基準を打ち立てています。神がこの宇宙の根幹に確固とした、普遍的な倫理原則を置いているのです。」

キング牧師のビジョンの真髄

キング牧師は「異文化への寛容さ」については語りませんでした。彼が理想としたのは愛でした。

「憎しみでは、憎しみの連鎖からは抜け出せない。ただ愛だけがその連鎖を断ち切る。」※4

人種差別の論争で、愛という言葉が出てくることは滅多にありません。しかしキング牧師は、人種・民族間の争いを克服する決定的で優先的な価値が愛だと主張します。

キング牧師が語る愛は聖書の愛です。聖書が語る愛は無条件の愛、自己中心ではなく、相手にとって完全な善を求める愛です。この種の愛は厳しさも伴う愛でもあります。真理をもって不正と不義に立ち向かう愛です。全能の神からの命令としての完全な真理であり、真理が敵対する人をも愛せるように、私たちを変えるのです。

キング牧師の夢

「夢」には新たないのちが必要です。「夢」は神とともに始まると、キング牧師は演説や著作の中で繰り返し語っています。というのは、神を抜きにしては、絶対的で、他を超越した正義は存在しないからです。キング牧師が語った愛を引き出す源は、神なしには存在しないのです。

キング牧師のこの展望に、人々が懐疑的であることは理解できます。よくクリスチャンと呼ばれる人々でも、聖書の教えに従わずに実生活を生きているからです。人種問題の渦中で、クリスチャンの失敗をよく目にするからです。

クリスチャンと呼ばれる人たちの失敗

聖書では、この社会の中で、教会が霊的、倫理的なリーダーシップを発揮することが求められています。この考えにキング牧師も同意しています。しかしアメリカの歴史を見ると、教会は人種差別問題に消極的で、後退的とさえ言える立場を維持してきたのです。ここ最近も、今日の人種差別問題に、教会は断片的な発言しかしていません。

現在でもアフリカ系の牧師・伝道者は民主党の候補者を支持する傾向があります。一方で、白人の牧師の多くは共和党とつながりを感じています。しかしキング牧師は、キリスト教がいつも聖書的な視点で判断することを見失わないようにと訴えていました。

キング牧師の生きた時代、教会リーダーたちの人種差別に対する発言が、今日以上に信頼を得ていませんでした。聖書が教えるキリスト教と、実際のクリスチャン生活の違いを、キング牧師ははっきりと理解していたのです。

キング牧師は神との関係を呼びかけた

聖書が教える倫理原則に従う生き方がどのようなものかを、キング牧師はその生き方をもって、アメリカ社会に訴え続けました。キング牧師は、人々が現状を乗り越えて、神との人格的な関係に入る必要を語り続けたのです。

現在社会には神は必要なく、神とは無関係だと語る人々に、キング牧師が語った言葉をご紹介します。

「私たちが神など必要ないと感じても、失望の嵐が襲う日がやってきます。災害の突風に遭遇する時もあります。悲しみの潮流に押し流される時もあるのです。もし深く鍛錬された信仰がなければ、感情で押しつぶされ、人生は粉々になってしまうでしょう。」

「私たちが本当の神ではなく、その他の『神々』により頼むならば、数多くの葛藤を感じることでしょう。科学の『神』にひざまずけば、そこから生み出されるのは原子爆弾です。原爆は人類に恐れと不安を与えるのです。科学では、恐れや不安は解決できないのです。」

「快楽の『神』を礼拝するなら、スリルはすぐに消え、感情の高揚も一瞬であることがわかります。もしお金の『神』にひれ伏すならば、愛や友情は金銭では買えないことがわかるでしょう。むしろ株価の下落や投資の失敗で落ち込みます。お金がもつ『神性』は不確かなものです。」

「これらのはかない『神々』では私たちを救えません。私たちに幸せを与えられません。ただ唯一の神だけが人を救えるのです。私たちは神に対する信仰を再発見しなければなりません。信仰だけが、暗く荒廃した谷間を、陽光あふれる喜びの道に変えることができるのです。信仰によって、暗い悲観主義の洞窟に、新たな光を灯すことができます。」※5

人種差別を根絶することは可能か?

アメリカ中に広がる人種間の分断を克服する上で、展望が持てずに失望してはいないでしょうか?あなたとは違う人々を愛せない自分に、葛藤を感じてはいませんか?マーティン・ルーサー・キングは、ナザレのイエスを信じる信仰こそが、この人種差別の病巣を解決する特効薬だと勧めています。

「悪を追い払うことはできます。しかし人の力だけでは無理です。たとえ神が独裁者のように無理矢理、人の人生に介入したとしても、神だけで悪を追い払うことはできません。ただ私たちが心の扉を開き、キリストを心にお招きする時に可能なのです。『見よ。わたしは、戸の外に立ってたたく。だれでも、わたしの声を聞いて戸をあけるなら、わたしは、彼のところに入って、彼とともに食事をし、彼もわたしとともに食事をする。』※6 神は礼儀正しい方です。心の扉を無理やりこじ開けることはしません。私たちが扉を開き、神を信じるときに、神と人が向き合い、私たちの罪で損なわれた人生が光り輝く人格へと変えられるのです。」※7

人種差別の心を変えるものは?

神との関係こそが、私たちが葛藤する罪を克服する力です。神との関係が、人種差別の罪に打ち勝つのです。人種差別は人と人との間の障壁となるだけではありません。人種差別は神の前で罪です。キリストこそが人種差別を解決する鍵だと、キング牧師は語ります。それは、イエスが十字架の上で、すべての罪の代価を身代わりとなって、支払ったからです。イエスは3日後に、死からよみがえりました。イエスは私たちに神のゆるしを与え、新たな人生を生きる力を与えます。キング牧師はこう話します。

「人はみな罪人です。みな神のゆるしの恵みを必要としています。これは悲観主義の鈍い考えではありません。クリスチャンの現実なのです。」※8

イエスを必要とする心こそが、人種差別に立ち向かう最大の武器です。私たちはみな罪人です。救い主を必要としています。私たちはみな神の前に立つのです。神の前では人種の優越性など関係ありません。道徳的にも、文化的にも、経済的にも、政治的にもその他、この世で優越感を感じる要素は全く関係がないのです。

すべての民族が、すべての文化が、ただひとりの救い主を必要としています。その救い主とはイエス・キリストです。

マーチン・ルーサー・キングは、「神と人とが向き合う」必要があると語りました。神が主導権をもって私たちに向き合うことで、初めて「神と向き合う」ことが成立します。イエスが私個人の罪の代価を十字架上で支払ってくださった事実に、私たちは信頼を置く必要があります。「ただ心の扉を開き、キリストをお招きする」のです。

キング牧師のこの言葉は、今も生きています。「私には夢がある」と語ったキング牧師の「夢」に新しいいのちを吹き込むために、私たちもキング牧師が歩んだ道を辿らなければなりません。私たちの道は、キング牧師のように暗殺者の銃弾に倒れる道ではないかもしれません。しかし神は自己中心や自己充足の人生に死ぬようにと導かれます。この信仰は、弱腰で現実逃避の宗教活動ではありません。この信仰は、究極的な善と義、真理を勇敢に追求していくことです。

「神の愛は太っ腹です。自分たちでは到底なし得なかったことを、神は私たちに提供してくれます。私たちは謙遜に、心を開いて受け入れば良いのです。それこそが信仰です。信仰によって、私たちは救われるのです。人は神によって満たされます。神は働き、私たちの人生に、社会生活に、信じられないような変化をもたらしてくれます。」※9

キング牧師が語った「夢」は神から始まります。神はひとり子イエス・キリストを現しました。神との関係の中で、私たちは人種差別、民族問題で病むこの世界に癒しをもたらす担い手となることができるのです。キング牧師のように、イエス・キリストを信じることを、真剣に考えてみませんか。私たちがシンプルにこう祈るときに、神はご自身との関係を始めてくださいます。

「イエスさま、私の人生にあなたをお招きします。私の罪をゆるしてください。あなたとの新しい関係を与えてください。私の心に愛を与えて、私が他の人を愛する力を与えてください。あなたが私の人生を造り変えてくださることを、ありがとうございます。」

もしあなたがこの祈りをすることで、あなたの人生をイエス・キリストにささげたのであれば、続けて人生が変わる信仰が与えられるように祈ってください。また、イエスにさらに信頼できるように祈ってください。私たちの心に超自然的な愛と、他者をも愛する力を与えるのは、神だけです。

神が私たちの人生を変えるとき、私たちはマーチン・ルーサー・キングが夢見た「夢」に生きることができるようになります。人種差別がないアメリカの実現という「夢」に…。

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Charles Gilmer【著者紹介】チャールズ・ギルマー
Cru.(キャンパス・クルセード・フォー・クライスト)の一環である「The Impact Movement」の創設者であり、元総裁。アフリカ系アメリカ人のリーダーを育て、彼らを遣わすことで、大学や地域社会、世界中にキリストの真理を伝えてきた。チャールズはアメリカ国内、アフリカ諸国の大学に招かれ、人種差別問題、宣教、信仰について数多くの講演を行なっている。ペンシルバニア大卒。神学博士。現在、チャールズと妻のレベッカはプリンストン神学校で研究生活を続けている。夫妻には6人の子どもと7人の孫がいる。

※1 マーチン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King, Jr)1929-1968年 牧師であり、アメリカ公民権運動の指導者。1955年アラバマ州モンゴメリーでアフリカ系のローザ・パークスが白人乗客に座席を譲らなかったことから逮捕された。この事件を契機に、キング牧師はバスボイコット運動を呼びかけ、全米各地に公民権運動が広がった。1963年8月に行われたワシントン大行進には20万人が参加。有名な「私には夢がある I have a dream」の演説を行った。1964年公民権法が成立。この年のノーベル平和賞を受賞。1968年テネシー州メンフィスで暗殺される。

※2 公民権運動 1950年代から60年代に行われたアフリカ系アメリカ人への公民権の適用と、人種差別の撤廃を求めた運動。

※3 文化相対主義とは文化人類学の用語で、人間の諸文化はそれぞれ独自の価値体系を持つ対等な存在だととらえる研究方法、態度。(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より)

※4 Strength to Love, p. 51
※5 前掲書, p. 51
※6 ヨハネの黙示録3:20
※7 前掲書, p.126
※8 前掲書, p. 51
※9 前掲書, p. 51


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